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北野武『アキレスと亀』 [こんな映画観たよ!]

映画スキー(20代♀)による勝手な映画感想です
印象批評そのもののシロウト意見なので、いらない方はスルーでお願いします



       *  *  *



北野武監督の『アキレスと亀』を観たよ。

国際的な評価を受けた『座頭一』に比べたら全然地味でつまらない映画かも知れない。
だけど、凡庸な才能しかない芸術家気取りの平凡な人間の半生を淡々と描く、まったく盛り上がらない主人公の人生がただ哀しくて、わたしは泣いてしまったよ。

芸術家志望者が1000人いたら、999人まではこんな人生なんだと思う。
しかもこの主人公、生きる事にまるで情熱がないし、バイヤーのいいなりで芸術的ポリシーもない、相身互いの奥さんが支えてくれなかったら野垂れ死にも当然の人間の屑みたいなやつ。
しかも頻繁に身の回りの人が死んで行くのに、人並の感情すら出て来ない欠陥人間ですらある。

だけど、この主人公は芸術家の狂気を体現していると言うよりは、現代人のある一面をゾッとするほど的確に描写していると思う。
特に日本人の「みんなお揃い」のキレイな上っ面を剥ぎ取ったら、こんなロボットみたいに無味乾燥なエゴイズムが剥き出しになるんじゃないかって気がして、鳥肌が立ったよ。
その事が、こんなにも豊かな文化社会にいながら、あがいてもあがいてもこれほど虚しく報われない、ちっぽけな一匹の人間でしかない主人公=自分が哀しくてたまらなかった。

宣伝コピーが言うように、『アキレスと亀』になぞらえて、解り易く感動的(?)な芸術家の夫婦愛を描きたかったとは、わたしには思えない。
永遠のパラドックスは、とうとうこの芸術家になりえなかった主人公の存在自体に投げ掛けられたテーマではないのか?

北野武はわたしにとってはTVでバカばっかりやってるお笑いタレントでしかなかったけど、その昔の「漫才ブーム」では一世を風靡したお笑い界の大スターだった過去がある。
売れない新人時代から、売れに売れた絶頂の「漫才ブーム」を経て、まったく売れない状態の不遇の時代に逆戻り、TV司会業でやっと地位を確立。
しかしその為にかえって映画監督としては長い間認められなかったという。

いつでも「売れる」事がメインテーマのメディア界を我流で生き抜いて来た彼の痛烈なしっぺがえしが、この映画なのかもしれない。
永遠の悪ガキのようなこの人を、実はLes Enfants Terribles(=恐るべき子供たち≒天性の芸術家)の一人ではないかと遅蒔きながら初めて思った。


2009-03-17 14:24 
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